東京交通新聞に掲載されました
高齢者の足コロナ禍も支え 東京・三幸自動車、地域から感謝の声
東京・三幸自動車、地域から感謝の声医療従事者、物流ドライバーとともに、エッセンシャルワーカー(必要不可欠な労働者)としての役割が再認識されたタクシー乗務員。新型コロナウィルスの感染リスクを抱えながらハンドルを握り、人々の移動を変わらず支えている。東京・多摩地区のタクシー会社、三幸自動車(西東京市、町田栄一郎=東京ハイヤー・タクシー協会ケア輸送委員長)は、コロナ禍でも高齢者、障害者の通院・通所をサポートし、地域から感謝の声が上がっている。
「電車・バスより安心」効率、売り上げ、二の次
タクシー運転歴15年の同社乗務員、小堀克己さん(70)は、「コロナの最初のころ、個人タクシーで感染が出たことで、私たちも誹謗中傷を受けたことがあった。今は、不特定多数の人が乗る電車バスよりも安心といってくれる人が増えている」と話す。
コロナ禍の中、どんな気持ちで仕事に臨んでいるのか。「糖尿病が少しあるので、病院勤めの娘から『コロナになったら死ぬよ』と言われている。ただ、そこまで怖いとは思わない。お客様は神様。お金を払って乗ってくれるから、私たちの仕事がある。人に親切にしたい」と前向きだ。
通院では必ず三幸自動車のタクシーを利用するという小堀サト子さん(77)。「足が不自由なので、時間になったら来てくれるのは本当に便利で助かっている。雨の日に傘をさしてくれるし、お願いをよく聞いてくれる。8年ぐらい使っている」と笑顔を見せる。同社は4月の緊急事態宣言以降、稼働を抑えながら営業を続けた。前年比収入6割減の厳しい時期もあったが、「ニーズはある。効率や売り上げは二の次」(町田社長)と奮闘してきた。売り上げの半分は無線からで配車数の7分の1は病院からの直通電話という。
町田社長は、「サロン的に病院へ行っていた人の需要はコロナでなくなっただろう。一方で、人工透析や定期的な検診などでタクシーを使いたがる人がいる。この夏、コロナと熱中症から身を守るために、コミュニティバスから切り替えた利用者もいた」と語る。
企業のテレワークと夜間需要の減退はタクシー営業に影を落とす。同社長は、「午前3時~4時台の無線配車はゼロ。その時間帯に人を置くのが難しくなってきた。今後は例えば、夜は他社と共同で無線を運営する、(クラウド型無線配車システムの)電脳交通に委託する、配車アプリに任せるといった選択肢を考えることが必要」と課題を投げかける。
「トライアンドエラーの繰り返しになる」と言い、「地元の飲食店と連携したフードデリバリーは続けたい。今年は忘年会が盛り上がらなそうなので、ホームパーティー向けにお酒やつまみを届けるサービスを考えており、賛同する企業も集まっている」。
障害者でも、介助付タクシーで小旅行を楽しめる独自の「オーダーメイドツアー」。「高齢の夫婦だったが、車窓から桜を見学したいとのこと。旦那さんから奥さんへのプレゼントという。売り上げのメーンにはならないが、利用者に感動を与え、乗務員のやる気につながる」と説く。